我々は、末梢血リンパ球と癌細胞とを混合培養し、さらにインターロイキン2(IL-2)で活性化して自己癌に対するキラー細胞を誘導し、それを癌患者に戻すことにより強い癌縮小効果を得たことを報告してきた。この癌細胞攻撃に働くキラー細胞は、主に細胞障害性Tリンパ球(CTL)と考えられ、混合培養せずに、IL-2だけで培養したLAK細胞とは異なり、自己癌に対する選択性が強いことがわかっている。しかし、CTLの形態や、癌細胞との相互反応における形態変化ついては充分観察されておらず、これらの検討を目的とした。 頭頚部癌患者のリンパ球を自己または同種の癌細胞と混合培養し、IL-2にて増殖させ、その癌細胞傷害活性、表面マーカー、形態の変化を経時的に観察した。細胞傷害活性は培養時間とともに増強し、表面にIL-2のレセプターの発現がみられた。形態的には、10mu程の比較的小型で均一な細胞で、表面に微絨毛を有し、細胞質内顆粒が見られた。これらは、大型で長い微絨毛と豊富な細胞質内顆粒を持つLAK細胞とは明らかに異なる形態を示しており、CTL、又は、CTLの前駆細胞と考えられた。 次に、これらのキラー細胞を舌癌患者に栄養血管である舌動脈を介して注入後、組織を採取し、電子顕微鏡で組織学的観察を行なった。癌巣の周辺部には強いリンパ球の浸潤があり、癌巣の基底膜をリンパ球が通過していく像が観察され、癌巣の内部にも多数浸潤しているのが観察された。これらのリンパ球は小リンパ球が主体であり、顆粒はあまりみられなかったが、微絨毛の発達と核の切れ込みなどCTLと類似の所見が見られた。リンパ球と接した癌細胞の一部には空胞を有するものもみられた。また、癌巣の周囲には巨細胞も観察され、7〜8個の核と著明な微絨毛様突起とミトコンドリアが観察された。
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