垂直性眼球運動障害に関与する部位として脳幹、前庭小脳の関与が考えられるが、臨床症例の検討からこの関与を認める特異な症例につき検討した。さらに、椎骨脳底動脈系の障害が垂直性眼球運動のみならず、斜向性あるいは回旋性眼球運動にも関与することが認められ、その責任病巣の局在、病因論につき検討を行った。前庭小脳、脳幹と末梢前庭器とのかかわりは主に密接な反射経路により結ばれている。より高次の中枢の存在が末梢前庭とどのようにかかわるかは今だ不明である。しかし、末梢性の前庭系入力の知覚(回転感覚)の高次中枢の局在は前庭代償、動揺病の発症機序などにとって重要と考えられ、この前庭感覚の中枢局在、機能について臨床例につき検討を加えた。 神経系のネットワークを形成するうえで接着分子は重要である。この意味において、ラットを用いた基礎的な研究は、末梢前庭および脳幹部位における各種接着分子の発現などについて検討した。発生段階における接着分子の動態については免疫組織学的に検討され、その局在の変化を観察した。残念ながら末梢前庭障害とそれにより引き起こされる前庭代償機転におけるこれらの因子の役割については明確な結論は得られず、現在さらに検討をすすめている。
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