研究概要 |
末梢前庭においても各種の神経活性物質の存在が明らかにされているが,これら神経活性物質が機能的に重要であるためには,そのレセプターの存在を明らかとしなければならない.今回,サブスタンスPの主要なレセプターであるNeurokinnin1レセプター(NK1 receptor)の末梢前庭器でのmRNAの発現を検討した. Wister系雄ラットより採取した蝸牛および前庭の組織はチオシアニン酸グアニジン法(GTC法)にてRNAを抽出した.RNAは定量した後にRT-PCR法にて増幅した.RT-PCR法は逆転写酵素にて42℃25分,99℃5分反応させcDNA作成した.用いたプライマーは既に報告されたラットNK1レセプター遺伝子配列より作成した.センスプライマー:5'-+512ACA-GAG-ACC-ATG-CCC-AGC-AGA-GTC-G+536-3',アンチセンスプライマー:5'-+831GAG-ATC-TGG-GTT-GAT-GTA-GGG-CAG-G+807-3',とし,膜貫通部を含むように設計し,期待されるbase pair(bp)は320bpである.これらのプライマーを用いて94℃30秒,60℃1分,72℃2分を1サイクルとして,30サイクル増幅を行った.エチレンブロマイド加1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行った.末梢前庭においてNK1 receptorの機能は不明点は多い.しかし,RT-PCR法を用いて蝸牛および半規管,耳石器組織での検討で,期待されるbase pairとしての320bpに単一のバンドが蝸牛および前庭組織にても形成されたことにより,末梢前庭器でもサブスタンスPの主要なレセプター(NK1 receptor)のmRNAの発現が認められ,サブスタンスPが内耳において機能的にも役割を担っていることが推察された.
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