研究概要 |
1)生後3ヶ月以降のミニ豚4頭を使用し、生後3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月のそれぞれの時点でネンブタール麻酔下に経外耳道的に鼓膜を穿通して左中耳腔内に流動パラフィンを注入し、その後抗生物質等の使用は行わずにそのまま放置した。反対側(右)はコントロールとして保存し、その後通常に飼育し5ヶ月処置群までは生後6ヶ月目で、また6ヶ月処置群は処置後2周目で断頭した。現在エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)で脱灰中である。 2)断頭後鼓膜を観察するに、処置側の鼓膜は昨年度と同様に鼓膜の発赤および穿孔を認め,全例で慢性中耳炎の状態であった。反対側の鼓膜は全く正常で,コントロールとした。処置側乳様突起表面の色調は昨年度の実験と同様にやや白色を呈し,乳様突起自体の発育も抑制されているような印象を受けたが,昨年度ほどその傾向は明らかでなかった。現在組織標本を作成中である。 3)平成3年度の組織標本観察の結果,生後一週および1ヶ月目処置例の処置側とコントロール側ではその乳様突起自体の発育程度が明らかに異なり、作成標本上での計測で蝸牛先端より乳様突起先端までの長さが有意差(Wiicoxon test p〈0.02)を持って処置側で抑制されていた。またその含気腔の抑制も明かで著明な蜂巣抑制状態を呈していた。組織学的にも含気上皮下の骨代謝層は著明に抑制されており、腔拡大に伴う骨吸収過程が処置による中耳腔上皮の炎症性変化により著しく抑制された所見を呈していた。また乳様突起表面骨膜下の骨代謝層でも同様な組織学的変化が観察され、中耳腔内に加わった炎症性刺激が外側の骨膜下までおよんだことを示していた。この結果は蝸牛を中心とした上鼓室天蓋やS状洞などの周囲組織までの距離が、中耳腔内の炎症性刺激による影響を受ける可能性を強く示唆した結果と考えられる。
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