研究概要 |
頭頸部悪性腫瘍の治療で耳管ー中耳に及ぼす影響を客観的耳管機能検査を用いて解明に役立てるのが本研究の目的である。 耳管機能検査をimpedance法で評価する予定であったが頭頸部悪性腫瘍患者ではValsalva法にて一定の鼻咽腔圧に達しないことが年齢的、体力的、手技的なためしばしばみられその評価が難しいことがある。そのような症例に対する耳管機能の評価として音響法を加えた耳管機能検査機器の調整を試みた。インピ-ダンスによる耳管機能検査は発振周波数226Hzの85dBの音圧を加えValsalva法,Toynbee法などによる鼓膜の変動を鼓膜のコンプライアンスの動的変動としてとらえ、鼻咽腔圧も同時に記録した。音響法は1KHzおよび6KHzのバンドノイズセレクタ-を用いた。これらを用いることにより潜在的耳管機能不全の検出が有用であり気管切開術後の症例でも耳管機能検査ができうると考えられた。頭頸部腫瘍患者の耳管機能障害は従来耳管狭窄と考えられていたがその中には耳管開放症が含まれている。今回耳管開放症の成立機転に関与すると思われる放射線照射後に生じた臨床的組織学的に興味ある耳管開放症の一症例を知見した。中耳ー上咽頭に及ぶ悪性腫瘍患者は放射線治療終了後に頑固な耳閉塞感を訴えた。滲出性中耳炎あるいは耳管狭窄症が考えられたが耳管機能検査および硬性内視鏡検査による耳管咽頭口周囲所見から耳管開放症であることが判明した。放射線治療後に耳管粘膜下組織がdense fibous connective tissue置換してていたと頭頸部悪性腫瘍剖検例の病理組織学的報告(Yamaguchi,Ann Otol Rhinol Laryngol,1990)をしたがこれらは相通じるものがあると示唆された。 客観的耳管機能装置が起動し始めたのでこれから頭頸部悪性腫瘍患者の耳管機能を測定し臨床的検討をおこなう予定である。
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