研究概要 |
我々は鼻粘膜上皮から末梢血単核細胞の培養によって顆粒球コロニーを増多する因子が産生し,種々の鼻疾患に重要な働きをする可能性を報告した(1985)。その後の研究で鼻粘膜上皮細胞からはGM-CSFをはじめ,インタロイキン6,8が産生されることが明らかとなっている。鼻アレルギー患者の上皮内には粘膜型肥満細胞が増多し,鼻アレルギー発症の重要な因子と考えられるが、この細胞増多はサイトカインによって影響を受けるものと思われる。特に鼻茸上皮細胞からは多量のサイトカインが産生されるので,まず鼻茸組織の上皮内肥満細胞数を正常人,鼻アレルギー患者の下鼻甲介上皮内肥満細胞数と比較した。この結果鼻アレルギーと鼻茸組織の肥満細胞は正常人より多く,特に鼻茸組織は正常人より4〜5倍の増多を示した(1993)。 次いで上皮内細胞由来の好塩基球ヒスタミン遊離因子について実験を行った。手術により摘出した3名の鼻茸組織から上皮擦過片を採取し,それぞれMcCoy液で3〜4日間培養の後,培養上清液を採取し,これを透析,ミリポアーでろ過した。これを鼻アレルギー患者から得た白血球分離細胞と30分反応させ,ヒスタミン遊離量をみた。この結果鼻茸上皮からは好塩基球ヒスタミン遊離因子が濃度依存的に産生されることが判明した。次いで10名から得られた鼻茸上皮擦過片培養上清液を濃縮し,これを透析した後セファデックスG75で分画しどの分子レベルにヒスタミン遊離因子の活性があるのかを検討した。この結果分子量15〜40kd付近に存在することが判明した。
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