ウシ網膜より高速液体クロマトグラフィ-にて網膜S抗原を分離精製し(蛋白濃度100mg/dlの抽出液)、完全フロイド・アジュバンド(CFA)に乳化懸濁して、10週令のルイス・ラットの足蹠に0.1ml(100μgのS抗原)の抽出液を注射し全身的に免疫して実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を発症させた。ラットをケタラ-ル(20mg/kg)の筋注で麻酔し、白血球除去フィルタ-として除去用線維を封入した5mlの注射器を用い、尾静脈を24Gの留置針にて確保し、全身ヘパリン化(4ml/kg)した。尾静脈から3ー4mlの血液を吸引し、線維に浸透させ、再度静脈内へ戻した。この操作を3回繰り返し10mlの血液処理を行った。この処理での除去用線維の除去率は、白血球系ではリンパ球は15ー66%(平均59%)とばらつきがあったのに比較して、好中球では70ー90%(平均81%)と比較的高率に除去できていた。血小板は約50%、赤血球は11ー20%の除去率であった。この実験系で注射器に除去線維を封入し、血液を吸引し、再度尾静脈に戻すという単純な手技なのでオンラインで行う方法と比較して除去率に若干のばらつきがあった。 この手技により白血球除去処理をしたラット、無処理のラット(コントロ-ル群・ヘパリン化済み)でのEAUの発症率を比較した。コントロ-ル群では、抽出液の100%、50%、10%においてそれぞれ15ー16日で3匹ずつ、9匹全例にEAUを発症した。S抗原の抽出液の10%で免疫し、白血球除去処理を行った群では、6匹中4匹が発症した。その内1例は、発症するまでの日数が3日延長し炎症もごく軽度であった。残りの2匹は発症しなかった。 発症が遅延していたものを有効とみなした場合、x^2検定で10%以下の危険率で有意であった。 EAUを発症したラットとEAUが抑制されたラットの抹消血中の白血球系、リンパ球サブセット(OKT4、OKT8、OKIA1)に有意な差はなかった。
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