研究概要 |
高齢者人口の増加に伴い,老人性白内障の手術と同時に眼内レンズの挿入を受ける患者か増加している。そこで本研究を行い,眼内レンズの組識適合性を,マクロファ-ジを指標として判定した。 正常猿を麻酔し,手術顕微鏡下に水晶体摘出術を行い,人工水晶体を眼内に挿入した。今回の人工水晶体はポリメチルメタクリレ-トとシリコンの2種類の素材で比較検討した。 眼内レンズ挿入後,1,2,3,4,5,7,14日にレ-ザ-フレアセルメ-タ-で前房内の蛋白濃度と細胞数を測定した。手術後,前房内の蛋白濃度は除々に減少していった。眼内レンズの2種類の素材で比較したところ,両者間に有意差はなかったが,ポリメチルメタクリレ-トの方がシリコンより術後災症が軽い傾向があった。 次に,眼内レンズ挿入後1,2,3,5,7日後,および3,5,9カ月後に眼球を摘出し,実体顕微鏡,走査型および透過型電子顕微鏡で観察した。人工レンズの表面に附着しているマクロファ-ジおよび異物巨細胞の数はシリコンの方がポリメチルメタクリレ-トよりも少ないようであった。 以上の結果よりポリメチルメタクリレ-トの方が手術操作の影響は少ないが,シリコンの方が長期の組識適合性は優れていると思われた。
|