研究概要 |
脳死状態をつくる方法として計画書に述べた1)心臓ショックによる方法,2)高濃度笑気ガス吸引による法,3)天幕ヘルニアの3法の予備実験を行った。その結果以下のことが判明した。1)心臓電気ショックによる方法は血圧下降及び心機能の回復に対してカテコ-ルアミン剤などの昇圧剤や強心剤の投与が必要で,この点,その後の点眼試験の効果判定への影響が問題となった。また開胸手術による侵襲が小さくなく、長期間の生命維持は困難であった。2)高濃度笑気吸入による方法は,技術的には比較的容易のように思われたが、脳死判定基準に会った状態を薬剤の投与なしに維持することは困難で,1)と同様の問題点があった。3)文幕上にバルンをおき天幕ヘルニアによって脳死状態を得る方法は理論的には優れた方法であったが、確実に脳死状態となった時期の判定などの難しい点があった。また、バルン技去を経過をみながら技去するなどを行ったが、1日以上の生命維持はできなかった。 以上、現時点では、これらの三法によって実験的脳死標本を確実につくりそのレベルを長期にわたって維持することは不成功におわっている。ただ、脳死状態が維持されたと考えられた小数例で、少くとも脳死期間24時間以前での虹彩の瞳孔活的筋のピロカルピンn対する過敏性獲得の出現はみられなかった。現在、椎骨動脈と内頸動脈の両動脈を結紮して脳死状態をつくることを行っている。椎骨動脈の露出と結紮がポイントであると考えられるが,椎骨動脈の露出,結紮もほゞ確実に行なえてきており,この方法は脳死作成にはよい方法と考えられ本実験(除神経動果の発現の有無)にとりかゝる計画である。
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