研究概要 |
1)3種類のフィルタ-(Kodak Wratten No.478,99,92)をそれぞれ通した青色光,緑色光,赤色光のいずれかを照射しながらラットを潅流固定することによって、光受容体間基質をそれぞれの波長の光の順応状態に瞬時に固定した。コロイド鉄および蛍光標識レクチンを用いて組織化学的に各々の光受容体間基質の分布について検索したところ,赤色赤照射網膜では暗順応型分布を示したのに対し,青色光および緑色光照射網膜では明順応型分布を示した。すなわち,青色光および緑色光は光受容体間基質の光応答をひきおこすのに対し,赤色光はひきおこさないことが同定された。以上の光波長の特性から,光受容体間基質光応答の発現に関与しているのは,杵体視細胞であることが推定された。 2)ラット明・暗順応網膜の光受容体間基質の分布について,電子顕微鏡を用いて検索したところ,明順応網膜では,視細胞外節先端部,網膜色素上皮細胞突起表面に顆粒状の光受容体間基質成分が集積していた。暗順応網膜では,視細胞外節部全体にわたってびまん性に顆粒状の光受容体間基質成分が分布していた。一方,網目状光受容体間基質成分の明・暗での差は検出されなかったことから,光受容体基質は大きく2つに分類でき,それぞれ異なった機能(顆粒状成分は物質運搬,網目状成分は網膜・色素上皮細胞間の接着)を担っていることが推定された。 3)視細胞変性モデル動物の網膜光受容体間基質の光応答についてレクチンを用いて組織化学的に検索した。2種類の遺伝性視細胞変性マウス(nr,pcd)網膜では,視細胞外節が中等度以上変性した時点で光応答が消失したのに対し,視細胞外節の全く形成されないrdsマウス網膜では,生後のいずれの時点においても光応答は検出されなかった。以上の結果から,光受容体間基質の光応答が発現するためには,正常視細胞外節の存在が必要であることが判明した。
|