研究概要 |
Interphotoreceptor retinoid-binding protein(IRBP)は網膜と松果体に局在し,実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の惹起抗原として知られいるが,前年度の研究で成功した新しいIRBPの精製法.すなわち抗IRBPモノクローナル抗体をリガンドとするアフィニティクロマトグラフィーにより精製されたIRBPを用いてEAUの発症病理の解明をまず行った。IRBP接種後採取した脾リンパ球は,IRBPの刺激により増殖反応を示したが,ELISAで測定した抗IRBPIgG抗体はEAU発症後に認められた。したがってIRBPによるEAUは,細胞性免疫によって誘導されることが示され,このことはリンパ球移入実験でも確認された。また,視細胞層を標的とするEAUにおいては.網膜色素上及(RPE)や網膜血管内及が構築する血液網膜関門の破錠がその発症に必須である。EAU発症直前,直後の眼組織を用いて,種々のモノクローナル抗体による酵素抗体法を行ったところ.RPEや網膜血管内及に接着分子であるICAM-1が発現していることがわかった。この結果より接着分子を介して活性化Tリンパ球が標的組織へ浸潤する機構が考えられた。 前年度の研究で,螢光抗体法により腎と眼組織に共通抗原が存在することを示唆する結果が得られているので,その共通抗原の純化精製を目的とした実験を行った。すなわち,抗IRBPモノクローナル抗体をリガンドとしたアフィニティクロマトグラフィにより腎組織から抗原の分離を試みたが現在までのところ成功していない。その原因の1つとして不溶性抗原である可能性もあり,今後分子レベルでの解析に進みたい。その前提となるEAU惹起能を有するIRBPのアミノ酸残基に関しては,合成ペプチドを用いた実験でほぼ決定済である。
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