Interphotoreceptor retinoid-binding protein(IRBP)を完全アジュバントとともにLewis ratに接種するとexperimental autoimmune uveoretinitis(EAU)が100%発症するのに対し、Brown Norway(BN)ratはEAU抵抗性である。ところが、腎臓に冷凍凝固を加えるとBN ratでもEAUが高率に発症する。その要因として腎・眼組織に共通抗原の存在が考えられる。そこで、この種のEAUの発症病理の解析と共通抗原の同定を目的として研究を行った。1.抗IRBPモノクローナル抗体を作製し、これをリガンドとしたアフィニティクロマトグラフィーで純化IRBPを精製した。Con Aカラムを用いた従来の方法ではCon Aの混入を避けることができず実験結果に影響を与えたが、この新しい精製方法により解決した。2.EAUの発症病理を解明するため、IRBP接種後の血清、脾リンパ球を用いてIRBPに対する免疫応答を検索した。その結果、接種後早期よりリンパ球の増殖反応が認められ、抗IRBP抗体も接種後7日目(EAU発症前)より検出できた。また、腎と網膜色素上皮(RPE)に対する抗体も同時期より検出された。したがって、この種のEAUの発症には細胞性免疫のみならず液性免疫も重要であると思われた。3.EAUの発症には血液網膜関門(BRB)の破綻が必須であるが、通常の接種方法によるLewis ratでのEAUと腎臓に冷凍凝固を加えたBN ratでのEAUには相違があった。すなわち、BN ratではRPEに対する抗体が補体依存性にBRBを障害するのに対し、Lewis ratでは接着分子であるICAM-1とLFA-1を介した機構がBRBの破綻に重要であった。4.腎抗原の免疫で得た血清中に眼組織に反応する抗体が存在することが分かった。5.抗IRBPモノクローナル抗体をリガンドとしたアフィニティクロマトグラフィーによって腎・眼組織共通抗原の分離を試みたが成功していない。4で得られた抗体を用いて再度検討する予定である。
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