研究概要 |
ヒトぶどう膜炎におけるEpsteinーBarr virus(EBV)の病因的関与を検索する目的で,原因不明のぶどう膜炎患者より得られた種々の検体を用いてEBV特異的抗体価の測定およびPolymerase chain reaction(PCR)法によるEBVゲノムの検索を行った.結果として,1)急性前部ぶどう膜炎患者の中にEBV特異的血清抗体価の異常(VCA IgM抗体陽性)を示す症例を認め,これらの症例はすべてHLAーB27陰性であった.従来HLAーB27と強い相関を示す急性前部ぶどう膜炎はひとつの疾患単位として知られているが,今回の症例は新しい概念に属すると考えられた.2)ある種の網膜色素上皮症においてEBV特異的血清抗体価の異常高値および血中EBV感染リンパ球の増加を認め,EBVとの関連が示唆された.3)原田病患者の髄液から高率にEBV DNAが検出され,また髄液中にEBV特異的抗体を認めた.同様の結果は,低い頻度ながら視神経炎患者にもみられたが,対照とした無菌性髄膜炎患者の髄液からは検出されなかった.このことは,特に原田病においてEBVが何らかの関連を有していることを示すものである.上記1)2)3)の結果から,ぶどう膜炎におけるEBV関与の可能性が示された。さらに上記疾患の発症機序解明に向けてのひとつのステップとして,正常眼内組織(死体眼)におけるEBVレセプタ-(EBVR)の発現の有無および発現の部位についてEBVRを認識するモノクロ-ナル抗体(OKB7)を用いて免疫組織学的に検索を行った.その結果網膜色素上皮層に一致して強い陽性所見を呈し,EBVが直接眼内に感染性を有する可能性が示された. 今後は症例の集積に加え,局所におけるEBVのmRNAレベルでの発現状態の解析などを行い,上述の研究内容をさらに発展していく予定である.
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