研究概要 |
ヒトぶどう膜炎におけるEpstein-Barr virus(EBV)の病因的関与を検討する目的で,正常眼内組織(死体眼)におけるEBVレセプター(EBVR)の発現の有無につきウェスタンブロッティング法による蛋白レベルでの解析を行った。その結果、虹彩毛様体、網膜、網膜色素上皮、脈絡膜の各組織から抽出した蛋白質中にEBVRのモノクローナル抗体に反応する145kdの蛋白質が分離された。これは従来報告されているEBVRの分子量と一致するものであり、同様の蛋白質はRaji細胞(EBVゲノム陽性Burkittリンパ腫Cell line)においても同定された。以上の結果はEBVが眼内に感染性を有する可能性を示している。 また片眼性の網膜色素上皮症(網膜色素上皮の萎縮)の所見を有する症例の末梢血を用いた検索の結果、 1)EBV血清抗体価の持続的異常高値、2)EBV特異的細胞性免疫能(Regression法)の低下、3)末梢血リンパ球中のEBV DNAの有意な増加(PCR法)を認めた。上記1),2),3)、に加え発熱のリンパ節腫脹がしばしばみられたことより本症例を慢性活動性EBV感染症と診断し、EBVの持続的活性化により網膜色素上皮に障害が出現する可能性が本症例により示された。 原田病の疾患感受性を規定しているHLA-DR抗原中のT細胞認識部位である第3超可変領域とEBV複製の際に感染細胞の核と細胞質に存在するnucleocapsid glycoproteinであるgp110との間に相同性の高いアミノ酸配列が存在することを文献的に見いだし、このアミノ酸配列を含む合成ペプチドに対する反応性(proliferation法)が原田病急性期患者のリンパ球にあいて上昇していることを認めた。 今後は、眼局所におけるm-RNAレベルでの発現状態の解析を行っていく予定である。
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