研究概要 |
単純疱疹ウイルス1型で強毒株である深山GC^+株(HSV-GC^+)の感染経路による病原性の違いについてマウスの系用いて検討し、以下の結果を得た。 1.HSV-GC^+の10^2PFUをIP接種した場合、死亡率は100%でウイルスは脳組織を含む各臓器から分離された。一方同ウイルスを歯内に接種した場合は死亡率は0%で、ウイルスは三叉神経節のみから分離された。 2.HSV-GC^+を歯肉に接種後、マウスは同ウイルスの致死的なIPシャレンジからのがれた。 3.HSV-GC^+の10^7PFUをマウスの歯肉に接種してから3日後、サイクロフォスファマイドをIP投与した場合、マウスの死亡率が0%から100%に変わり、脳幹部からウイルスが分離されるようになった。 4.HSV-GC^+の歯肉接種後では、歯肉切片組織内のTcRγδ細胞は、非感染マウスに非較し、その数が約2倍に増加した。 5.HSV-GC^+のIP接種後では、肝臓内のみのVβ11^+αβ細胞(禁止クローン)が非感染マウスに比べ2倍に増加した。しかし歯肉接種マウスでは同クローン数に変化は無かった。 6.C3H/He,AKR/N,B・10A/sgsnマウスの歯肉にウイルスを接種した場合、Balb/Cの場合と同様にマウスの死亡率が0%あるいは20%であった。 以上の結果から、歯肉組織にはHSVに対する免疫防御機構の存在が示唆された。同機構は、各種マウスを用いた実験から、同種抗原であるMls-2はa型およびb型にかかわりなく存在すると考えられる。今後、初期感染の防御に重要な役割を持つTCRγδ型T細胞の機能を歯肉組織を用いて検討する必要があると考える。
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