内毒素がラット歯根膜線維芽細胞によるコラ-ゲン原線維の貧食能を亢進することを、in vitroの系で証明することを目的に8月末に炭酸ガス培養器を購入し、これまでラット及びヒト歯根膜由来線維芽細胞株の樹立に努めてきた。ラット歯根膜線維芽細胞に関しては、顎骨より抜去したラット臼歯を、歯頚部から注意深く歯肉組織を全て剥離除去した後、培養皿底面に静置しそのまま培養することによりout growthしてきた細胞を集めて継代可能な細胞を得ることが可能になった。これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をなし、その多くがラット臼歯歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファタ-ゼ反応陽性を示すことがわかった。現在、株細胞とすべく継代を続けながら本研究に使用可能な数になるように細胞を増やす一方、その生物学的特徴をさらに検討しているところである。ヒト歯根膜由来線維芽細胞株に関しては、便宜抜去歯ないし抜去埋状智歯歯根に付着している歯根膜組織を剥離し培養することにより、線維芽細胞様細胞を得ることが可能であることがわかった。しかしながら、これにより得られた細胞にはアルカリホスファタ-ゼ陽性反応を示す細胞はわずかしか認められず、歯根膜由来細胞としての同定について検討中である。今後、これらの歯根膜由来細胞をコラ-ゲン基質中で培養し、超微形態学的、免疫組織化学的、組織化学的に観察することにより、歯根膜線維芽細胞によるコラ-ゲン原線維の貧食作用をin vitroの状態にて検討する実験系を確率したい。さらに、本培養系に内毒素を始め、リソソ-ム内でのコラ-ゲン消化を停止するleupeptin、コラ-ゲナ-ゼの作用を阻害する抗コラゲナ-ゼ抗体、抗ストロメリシン抗体等を添加し、歯根膜線維芽細胞によるコラ-ゲン原線維の取り込みおよび消化作用に及ぼす内毒素の作用とこれらの酵素との関係について検討を加える予定である。
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