内毒素がラット歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維の貧食能を亢進することを、in vitroの系で証明することを目的に、これまでラット歯根膜由来線維芽細胞株の樹立に努めてきた。その結果、顎骨より抜去したラット臼歯を、歯顎部から注意深く歯肉組織を全て剥離除去した後、培養皿底面に静置培養しout growthしてきた細胞を集め継代培養することにより、4種類のラット歯根膜由来継代可能な培養細胞を得ることが出来た。これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、いずれも歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファターゼ陽性を示す細胞を含んでいた。そのうち一つは既に継代19代目に至り、免疫組織学的にビメンチン、ケラチン(TK)、オステオカルシンに陽性を示すと共に、石灰化能を示唆するアリザリンレッドS染色陽性を示した。アルカリホスファターゼ陽性反応はほぼ半数の細胞の細胞膜及び細胞内顆粒に見られた。また、上記材料の一部より歯肉由来線維芽細胞の継代培養を試み、現在継代10代目の細胞を得ている。本細胞はもっぱら紡錘形の細胞からなり、アルカリホスファターゼに陰性である。今後さらにこれらの歯根膜及び歯肉由来細胞の生物学的特徴を超微形態学的、免疫組織化学的、組織化学的に検討すると共に、これら細胞をコラーゲン基質中で培養し、形態学的な面から、歯根膜由来線維芽細胞のコラーゲン原線維の貧食能をin vitroの状態にて検討する実験系を確率したい。さらに、本培養系に内毒素を始め、リソソーム内でのコラーゲン消化を停止するleupetin、コラーゲナーゼの作用を阻害する抗コラゲナーゼ抗体、坑ストロメリシン抗体等を添加し、歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維取り込みおよび消化作用に及ぼす内毒素の作用とこれらの酵素との関係について検討を加えたい。また、歯肉線維芽細胞についても同様に検討し比較したい。
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