ラット歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維の貪食能を内毒素が亢進することを、in vitroの系で証明することを目的に、まず、ラット歯根膜由来線維芽細胞株の樹立に努めてきた。その結果、顎骨より抜去したラット臼歯歯根より、4種類の歯根膜由来継代可能な培養細胞を得ることが出来、現在最高27代目まで継代し、その一部は適宜液体窒素中に凍結保存した。これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、いずれも歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファターゼ陽性を示す細胞を含んでいた。また、免疫組織学的にビメンチン、ケラチン、オステオカルシンに陽性を示すと共に、アリザリンレッドS染色により石灰化能を有することが示された。アルカリホスファターゼ陽性反応はほぼ半数の細胞の細胞膜及び細胞内顆粒に見られた。また、ラット臼歯部より歯肉由来線維芽細胞の継代培養を試み、18代目まで継代しその一部は液体窒素中に凍結保存中である。同細胞はもっぱら紡錘形の細胞からなり、アルカリホスファターゼに陰性であり、石灰化能もほとんど見られない。これら細胞を用い、形態学的な面から歯根膜由来線維芽細胞のコラーゲン原線維の貪食能をin vitroの状態にて検討した。すなわち上記歯根膜由来継代培養細胞をコラーゲンゲル中で立体培養し、電顕観察することによりこれら細胞によるコラーゲン原線維の取り込み像を検索した。コラーゲンゲル中での細胞の増殖ははじめかなり抑制されたが時間の経過(約10日後)と共に旺盛となった。電顕観察により紡錘形細胞内へのコラーゲン原線維の取り込み像は認められたものの本研究の遂行の為には不十分な所見しか得られず、現在コラーゲンゲルの濃度、培養条件、観察方法を検討中である。また、同培養系に内毒素を添加した場合のコラーゲン原線維の取り込みおよび消化作用に及ぼす影響についても検索予定である。
|