研究概要 |
従来のWHO国際分類には掲げられていない、各種腫瘍型について、臨床病理組織学的・免疫組織化学的・電顕的に検討し、次の知見を得た。 1.筋上肢腫:良性筋上肢腫の構成細胞は,多形性腺腫の索状・充実性増殖部に共通した免疫染色性(ケラチン,ビメンチン,S100蛋白,アクチン等に陽性)を示し,組織学的に多形性腺腫の亜型とみなされた。上皮様・明細胞型に浸潤性増殖,術後再発をきたす例が多いほか,紡錘細胞型や形質細胞様型にも転移を伴う悪性例があり,未分化癌を診断した例が筋上肢癌であることが判明するなど,悪性型を分類する必要性を確認できた。 2.唾液管癌:PCNAをマ-カ-に構成細胞の増殖活性を検討したところ,他の腫瘍型よりも高い陽性率を示し,高悪性の臨床的態度とよく相関した。本腫瘍の構成に筋上肢の関与はなく,純上肢性であることも示された。 3.多形低悪性度腺癌:欧米で報告されているよりもはるかに稀であり、その出現頻度に地理的差異のあることがうかがわれた。多様な増殖パタ-ンにかかわらず,均一な小細胞から成り,腺腔を形成しながらも上記の腫瘍性筋上肢に一致したマ-カ-やEMAの発現を示すことから,免疫染色が他の腫瘍型との鑑別に有用であることが示された。 4.上肢筋上肢癌:腺上肢・筋上肢2相性を示す定型例のほか,筋上肢性明細胞が大多数を占める単相性の例もあり,上記の明細胞型筋上肢腫との区別を明確にはできなかった。その浸潤性発育は明らかなものの,臨床的に低悪性の腺癌とみなされた。 5.基底細胞腺癌:基底細胞腺腫の組織学的特徴を備えながら,浸潤性増殖の明らかな腫瘍を、良性型や腺様嚢胞癌等と区別して分類する必要があることが示された。
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