(1)ヒトのリコンビナントBMP-2(Genetic Institute社製2M12)とBMP-3(3M10)に対するポリクローナル抗体(兎血清)を作製した。 (2)作製した抗体を用いて良性唾液腺腫瘍である多形性腺腫(軟骨成分を含むもの:2例、含まないもの:9例)を免疫組織化学的に検討し、平成3年度の結果に症例を追加した。その結果、BMP-2陽性所見は、主に導管を形成する腫瘍細胞の細胞質にみられ、充実性増殖部の一部の腫瘍細胞もまれに陽性を呈した。軟骨腫様部の細胞は弱陽性あるいは陰性で、軟骨成分の発現と腫瘍細胞によるBMP-2産生との明かな相関は認められなかったが、一部の多形性腺腫の腫瘍細胞はBMP-2を産生している可能性が示唆された。軟骨成分の発現にはBMP-2だけではなく、他の要因の関与が必要と考えられた。正常唾液腺(ヒト)では排出管導管細胞、介在部導管細胞の細胞質が陽性を呈し、粘液性および漿液性いずれの腺房細胞も陰性であった。 (3)レチノイン酸は0.1μM以上の濃度で、6-48時間のincubationで、用量依存性にBMP-2のシグナルを増強させることが判明した。1-5時間の間の変動については再検討が必要であった。レチノイン酸は同時にHSG-S8細胞の細胞周期のG1期からS期への進行を阻害し、増殖を抑制した。この時c-mycの発現も抑制された。 (4)コラーゲンスポンジを用いてHSG-S8細胞と線維芽細胞(C3H10T1/2あるいはST2)とのco-cultureを試みたが、骨形成を誘導させることには未だ成功していない。
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