研究概要 |
破骨細胞を欠損しているために大理石骨病を発症するop/opマウスが、macrophage colonyーstimulating factor(MーCSF)の遺伝子に突然変異を持っていることが最近明らかになった。我々は、このマウスに遺伝子組換型ヒトMーCSF(rhMーCSF)を毎日1回14日間投与すると、破骨細胞が出現して大理石骨病が治癒することを確認した。さらに,5μgのrhMーCSFを1回投与しただけで破骨細胞が出現し、骨吸収を続けることを見出した。しかし、1.5μgの投与では破骨細胞はほとんど出現しなかった。5μg rhMーCSF投与後3日目に、破骨細胞の数は急激に増加し、すでに成熟して骨吸収を始めているものも見られた。次に、bisphosphonate(BP)をrhMーCSFを投与して破骨細胞が出現した後に投与した。BPは、骨に強い親和性を持ち、BPが吸着した骨を吸収した破骨細胞が特異的に殺される山考えられていたが、確たる証拠は得られていなかった。生後11日目のop/opマウスにrhMーCSFを投与し、生後20日目にBPを投与したところ、破骨細胞の数が減少し、BP投与後3日目にはほとんど見られなくなった。電顕的に、BPを投与して翌日には破骨細胞のruffled borderが消失していることが観察されたが、他の細胞には形態変化は認められなかった。これらの結果は、BPを投与することによって破骨細胞が特異的に殺されることを示す。rhMーCSF投与後3日以内にBPを投与した場合には、BP投与から3日後でも破骨細胞は観察された。特に、rhMーCSF投与の翌日にBPを投与した場合には、BPを投与しなかった場合と同程度の数の破骨細胞が認められた。これらの結果は、BP投与によって成熟した破骨細胞だけが障害を受けることと、BPが破骨細胞の分化には影響を与えないことを強く示唆する。以上の結果から、1回のrhMーCSF投与によって、破骨細胞が一過性に出現するが、成熟した破骨細胞の機能発現にはMーCSFは必須ではないことが明らかになった。
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