本研究は、正常骨芽細胞および線維芽細胞の細胞骨格の分布・走行を明らかにすると共に、歯周病と深い関わりがあるPGE_2が、骨膜周辺に高濃度で存在した場合の骨芽細胞、線維芽細胞の外形変化および細胞骨格の分布変化を検討した。PGE_2は、1mg/1mlの濃度のものをラット前歯部歯槽粘膜下及び頭蓋皮下に2ml注射した。投与8時間後ラットに、tritonX‐100とglutaraldehydeの混合液潅流法を施した(なおこの方法は、細胞形態を維持し且つ細胞骨格を選択的に観察できる方法であり、昨年度実績報告書記載の正常骨芽細胞に於いて施した方法と同様)。歯周病罹患モデルラット(PGE_2投与時)における細胞骨格:(1)PGE_2投与後の骨芽細胞は、細胞外形を星状形に変化し、細胞突起先端は分岐したり、ボタン状に膨れ他細胞に付着していた。類骨に接する細胞膜直下では、microfilamentの太い束(stress fiber)は、観察されなかった。また免疫電顕所見では、類骨に接する細胞膜直下にはactin標識金粒子の局在したmicrofilamentの太い束は観察されず、α‐actinin標識金粒子も局在していなかった。なお、以上の結果は、歯槽骨・頭蓋骨骨芽細胞とも同様であった。正常時(非投与時:昨年度の実績報告書「正常骨芽細胞の細胞骨格」に記載)と比較すると、類骨に接する細胞膜直下に存在するmicrofilamentの太い束(stress fiber)が、PGE_2投与時には消失していた。 stress fiberが細胞接着機能に関与していると報告されていることから、PGE_2投与時の骨芽細胞は細胞接着機能が低下していると考えられる。 (2)PGE_2投与後の線維芽細胞は、外形を星状形に変化していた。 また細胞膜直下および細胞突起部分に、非投与群では存在しなかったmicrofilamentの太い束が観察された。免疫電顕的観察によって、これらのfilamentにはactin標識金粒子が、filament間にはα‐actinin標識金粒子が局在した。以上よりPGE_2投与後線維芽細胞には、細胞内にstress fiberが生じたと思われる。
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