各種の黒色色素産生性嫌気性桿菌株より構造の異なるプラスミドを8種類検出しそれらの制限酵素地図を作製した。それらに大腸菌ベクタ-pBR322および耐性マ-カ-を付加しすることでベクタ-を作成し、それらのDNA(大腸菌から抽出)を用いてP.gingivalisのエレクトロポレ-ション法による形質転換を試みた。しかし予測に反し形質転換体は得られなかった。その理由の一つとしてP.gingivalisは外来DNAに対する制限作用を有することが予測された(最近A.ProgulskeーFoxらにより同菌種のメチラ-ゼの存在が報告され筆者の予測が裏付けられた)。 そこで次の、制限作用を受けずにプラスミドを移入する試みの一つとして大腸菌からP.gingivalisに接合伝達可能と報告のあったShoemakerらが作成したリコンビナントプラスミドpE5ー2を一旦P.gingivalisに伝達(モビライゼ-ション)し、得られたP.gingivalis由来pE5ー2DNAを用いて再度形質転換を試みたところ予想どおり形質転換体を得ることができた。これはP.gingivatis菌における初の形質転換成功例でありその成果は第65回日本細菌学会総会にて発表予定である。 しかしながら前記実験に用いたプラスミドpE5ー2はサイズ的に約17kbと大きいため脱落頻度が高く、また適当な単一切断制限酵素サイトを有しないなどクロ-ニングベクタ-としてそのまま用いるには適さないことから、次いでpE5ー2上に2箇所存在するAvaIサイトの切断で生じたDNA断片の一方をセルフライゲ-トすることで約8kbのプラスミドpYT7を作成し、それによりP.Gingivalisの形質転換を行った。pYT7はpE5ー2より安定であるのみならずEcoRIなどいくつかのクロ-ニングに用いうるサイトを有しており、ベクタ-として利用可能である。現在、これら得られた成果を実際のクロ-ニング実験に応用すべク、各種実験条件の検討を行っている。
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