研究概要 |
辺縁性歯周炎の発症や進展にプラ-クが関与することはよく知られている。とくにプラ-ク中のグラム陰性桿菌の作用が大きいが,パラサイト側の因子だけでなく,ホスト側の因子も病変の進展に大きく関与する。したがって,自己免疫疾患をもっているヒトでは,組織の破壊が強くなることが予想される。実際にどのような病変がみられるかは明らかでない。辺縁性歯周炎に自己免疫疾患を併発している場合のモデルとして15〜20週齢のMRL/MPJーlpr/lprマウスを用いて歯周組織を病理組織学的,組織化学的および電顕的に観察した。歯肉溝上皮は数層の上皮細胞で,そして上皮下結合組織は密なコラ-ゲン線維で構成され,上皮細胞間隙には,ときに数個の好中球が認められた。強い酸性ホスファタ-ゼ活性が組織球にまれにみられることもあった。電顕的に歯肉溝上皮の細胞間隙はやや拡大し,細胞間隙にはマクロファ-ジや好中球が,そして上皮細胞内には空胞が認められた。炎症が強い場合では,上皮細胞間隙に好中球の浸潤が著しく,また,マクロファ-ジもみられた。マクロファ-ジには強い酸性ホスファタ-ゼ活性が認められた。電顕的には,歯肉溝上皮の空胞は数を増し,多くの細胞に空胞がみられ,上皮細胞間隙もさらに拡大し,脱顕粒を起こした好中球および強い酸性ホスファタ-ゼ活性をもつマクロファ-ジなどが認められた。歯周組織近くに血管炎がみられることがあり,それには好中球優勢型と単核球優勢型とがあった。後者では,Iak陽性細胞やL3/T4陽性細胞が比較的多く認められ,また,強い酸性ホスファタ-ゼ活性を示すマクロファ-ジも散見された。
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