非角化重層扁平上皮の最上層細胞の自由表面にはマイクロリッジと呼ばれる細胞質の隆起構造がみらる。マイクロリッジの描く模様は動物種によって異なり、魚の口腔粘膜では細胞を単位に渦巻いた模様を描いている。この構造は動的で、環境の変化に応じてリッジから突起へ、また、その逆へ変化することが知られている。また、魚類の口腔粘膜上皮のマイクロリッジはケラチンフィラメントを土台にしたアクチンフィラメントから構築されていることを、超薄切片法で明かにしてきたが、立体的にどのようにして帯状の隆起構造が形成されているかは、まだ明らかにされていない。本研究の目的は、高分解能走査型電子顕微鏡を用いて、マイクロリッジとこれらのフィラメントの立体的関係を調べることである。 粘膜上皮をサポニンやトリトンX-100で処理し細胞内の可溶性タンパク質を洗い出した後、通法に従い、固定、脱水した。いくつかの試料については、脱水途中に液体窒素中で割断した。臨界点乾燥後、金蒸着し、高分解能走査型電子顕微鏡で観察した。 上皮を表面から観察すると、界面活性剤により所々形質膜が溶かされ、膜下のフィラメントの走行を観察することができた。この最表層のフィラメントは超薄切片法の結果からアクチンフィラメントと考えられる。錯走するフィラメントが所々で隆起しリッジをを形成していた。割断面では、リッジ内部のフィラメントはリッジの模様に平行するもの、直交するもの、斜走するものが見られた。基部では、アクチンフィラメントは網目状に密に配列するが、表面に平行に束になって走り細胞側面において密着結合部の形質膜に付着するものも観察された。マイクロリッジ基部より下層では、やや太い、ケラチンフィラメントと考えられるものが網目状に配列しており、マイクロリッジ膜の供給源と考えられている分泌顆粒膜や核膜に結合していた。
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