研究概要 |
本年度は研究の初期段階として、低カルシウム(低Ca)食飼育ラットによる実験モデルを用いて、1ーhydroxyethylideneー1,1ーbisphosphoーnate(HEBP)の骨吸収抑制作用に関する基礎的検索を試みた。Wistar系雄性ラット体重約100gを正常Ca食あるいは低Ca食を含む半合成飼料を与えpair feeding法により飼育した。両群のラットをさらに2群に分けて、実験群ラットにはHEBPを8mgP/kg/dayの投与量で皮下注射し、対照群には同容量の生理食塩液を皮下注射した。ラットは飼育6日目に屠殺し、血液、尿、糞に関する生化学的測定を行い、さらに脛骨近心部の非脱灰研磨切片を作成し、観察を行った。正常Ca食群、低Ca食群ならびにHEBP投与群のラットは、実験期間内にほぼ同一の体重増加を示した。血清Ca値に変化は見られなかったが、ionized Ca値は正常Ca食群、低Ca食群ともにHEBPを投与したラットにおいて増加する傾向が認められた。尿、糞中のCa排泄は低Ca食群で著しく減少したが、低Ca食・HEBP投与群では低Ca食群よりも高い値を示した。Contact microradiographにおける観察により、低Ca食群の脛骨近心端で2次骨梁は減少し、海綿骨を中心とした骨吸収が認められた。低Ca食・HEBP投与群では骨端軟骨層の幅が増大したが、骨梁部の骨吸収は抑制される所見が得られた。このような現象は、HEBPの骨塩の溶解を阻害する作用とともに、骨吸収細胞系におよぼす作用が複合して発現したものと考えられる。以上の実験結果より、低Ca食により発現する骨吸収をHEBPは抑制することが明らかとなった。
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