研究概要 |
破骨細胞形成には、血液幹細胞(stem細胞)と破骨細胞支持細胞(stromal細胞)との共存が必要であることが知られているが、昨年度までに破骨細胞形成を強く支持するstromal細胞(TMS-12,TMS-14)のクローン化に成功したのでこの細胞を用いて、破骨細胞形成因子の単離および、破骨細胞形成の機序の解明を試みた。TMS-12は、PGE2,PTH,vitaminD3などの破骨細胞形成促進物質を添加しなければ、破骨細胞形成を支持できないが、TMS-14は、それら物質の存在無しでも破骨細胞を形成することができる。そこで、この両細胞を用いて、遺伝子学的に破骨細胞形成因子を探索したが、その過程においてこの両者の破骨細胞形成能の差は破骨細胞形成抑制因子の産生量によることが明らかになった。そこで、破骨細胞形成抑制因子の単離、精製を試みたところ、本物質は分子量10000以上のタンパク質で、熱に安定な物質であることが明かとなった。さらにこの物質はある種の骨吸収抑制剤によりその産生が誘導されることが明かとなり、現在、遺伝子的にもその産生機序の解明を行っている。一方、破骨細胞形成の機序に関しては、破骨細胞形成促進因子の産生に関わる細胞内シグナルとしては、細胞内、cAMPの上昇および、A-キナーゼが深く関与していることが明かとなった。また、破骨細胞形成には、stem細胞とstromal細胞との接着が必要であるが、この破骨細胞形成に関わる接着はstromal細胞上のICAM-1とstem細胞上のLFA-1(CD11a/CD18)を介する接着および、stem細胞上のICAM-1とLFA-1を介する接着が重要であることが明かとなった。しかし、これらの接着分子の抗体を用いた場合でも、破骨細胞形成は約50%しか抑制されないことより、それ以外の接着分子が破骨細胞形成に関与する可能性があり、現在その解明を行っている。
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