研究概要 |
延髄レベルの三叉神経系において、辺縁系構成要素の一つである扁桃体が痛覚受容を修飾するかどうかを侵害受容反射と見なされている開口反射(JOR)を指標に調べた。 方法:Nembutalで麻酔したネコの臼歯歯髄をduration0.5msec,intensity50ー300μAの単一矩形波で双極性に刺激し、同側顎二腹筋筋活動(JOR)を針電極にて双極誘導し加算平均した。歯髄刺激に対して同側扁桃体条件刺激は同芯円電極にてduratiom0.5msec,330Hz,50ー400μAで100msecの間、連続的に与えた。 結果および考察:閾値の1.2ー1.5倍の歯髄刺激によって誘発されるJOR(潜時7.49±0.66msec,n=14)は扁桃体外側核、中心核(ACE)および扁桃周囲皮質の条件刺激によって抑制された。このうち、ACE以外は刺激強度を上げると閉口運動を引き起こした。300μAのACE条件刺激はCーT interval(条件刺激の開始から試験刺激までの時間)が110msecで最大の抑制(83.1±11.2%,n=14)を示し、約700msecでコントロ-ル・レベルに回復した。またACEへの0.5M monosodium glatamate(10μl)の注入は同様にJORを約10分間抑制した。この抑制効果がどのレベルで起こっているがを調べるため、三叉神経感覚複合体や運動核刺激によって得られるJORおよび歯髄刺激によって引き起こされる感覚複合体での誘発電位に対するACE条件刺激の効果を観察した。三叉神経主知覚核や脊髄路核刺激によるJORは抑制を受けたが、運動核刺激による開口運動や歯髄刺激による誘発電位は影響を受けなかった。以上の結果は(1)扁桃体外側核や扁桃周囲皮質は閉口筋運動細胞に促進的に作用すること、(2)扁桃体中心核内の細胞の興奮は開口反射を抑制する、(3)その抑制部位は感覚核レベルではなく運動核レベルであることを示唆する。
|