これまでの研究で、歯髄の温度刺激により誘発される神経応答と感覚は正の相関を示し、神経応答の発火頻度が増加するにしたがって、誘発される感覚強度は増加することが判明した。3年度の研究では、さらにこの研究を発展させ、温度刺激を様々な時間間隔で繰り返し与え、そのときに生じる神経応答の変化と感覚強度との関係、さらに、記録電極を刺激電極に換え、神経線維の微小刺激を行い、誘発される感覚と刺激強度、あるいは、刺激頻度との関係を明らかにした。まず、歯髄の温度刺激に応答する神経活動を記録後、温度刺激間隔を30秒から3分まで、段階的に変化させ、そのときに誘発される感覚と神経応答の関係を検索した。その結果、痛覚誘発刺激強度以下の刺激強度では、繰り返し刺激を与えた場合、刺激時間間隔が短い程、官発される感覚は増強されるのに対し、神経応答はほとんどの例で、減少または変化を示さなかった。次に、記録電極を刺激電極として用い、同定された神経線維を微小刺激し、誘発される感覚を記録した。感覚の記録は、歯髄刺激により誘発される感覚を記録したのと同様の方法を用い、各感覚強度を0ー5段階に分け、オシロスコ-プ上に基線の高さとして被検者に表示させた。その結果、刺激強度が弱く、頻度が低い時には、痛覚ではなく圧覚が誘発された。圧覚が誘発される刺激頻度で、さらに刺激頻度を増していくと、誘発される感覚は指数関数的に増加し、ほぼ100Hzでピ-クに達した。また、神経刺激によ誘発される感覚誘発部位は、痛覚或値以下の刺激強度においては、温度刺激した歯の歯冠部に限局していたが、痛覚雑値以上の刺激においては、歯牙全体に拡る広い範囲に痛覚が誘発された。
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