研究概要 |
ラット顎下腺は刺激の種類に応じて3種類に分類できる分泌型(α,βおよびγ型)のタンパク質を分泌する。今回はよりよい刺激を求める目的でα型アゴニストを3種類〔m-オクトパミン(裏面研究発表参照),チラミン(J,Dent.Res.印刷中)およびP-オクトパミン(J.Dent.Res.印刷中)〕について検討した。また,γ型アゴニストも4種類を検討し素晴らしい成績を得た(裏面研究発表参照)。生後1〜2年経過したラットを用いて3種類の分泌型から老齢化の指標になるタンパク質を検討した。しかし,目標の成分は交感神経性β_1-レセプター刺激薬でしか分泌されなかった。また,個体によっては出現しないものもみられた。少量の試料から本タンパク質を精製し,アミノ酸分析,等電点,分子量などを決定した。また,設備備品のクリーンベンチ等を用いて本タンパク質の培養胸腺細胞に及ぼす作用を明らかにした。さらに,抗血清を作製し本タンパク質の組織の局在を検討した。しかし,アミノ酸配列を検討し始めて試料がなくなってしまったので,実験系をLife spanの短いMRL/lマウスに変更した。MRL/lマウスは遺伝的に免疫亢進したマウスであり,全身の各組織,特に顎下腺,涙腺,脾臓および各リンパ節が著明な影響を受ける。組織学的に検討した所,各組織内に胚中心が形成されていた。脾臓では赤脾髄が少なくなり,リンパ球を産生する白脾髄が顕徴に多くなっていた。しかし,耳下腺や舌下腺へのリンパ球の浸潤は全く認められなかった。MRL/lマウスを用いた実験系における大きな発見は全唾液のタンパク質成分に異常が認められたことであり,世界で最初の報告(福岡歯大誌,歯基礎誌)になった。本タンパク質の分離・精製を進めている。本タンパク質は今回設備備品として購入したクリーンベンチを用いて培養した胸腺細胞の分化・増殖を顕著に抑制した。今後,このタンパク質の生化学性状や生理機能を精査する。
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