研究概要 |
Porphyromonas gingivalisはLPS,外膜蛋白,fimbriae,コラーゲナーゼ,IgG分解酵素に代表される蛋白分解酵素などの種々の表層抗原の存在が知られており,その主要免疫抗原の分子量に関する研究はいくつか報告がみられる.しかしながら,その性状に関する報告は極めて少ない.本研究の目的はP.gingivalisの主要免疫抗原の性状について免疫学的手法により検討することである. 前年度の研究において,P.gingivalis抗原に対する熱処理による影響について検討した.今年度はパパイン処理による影響について検索した.3種類の抗原標品(全菌体,超音波破砕抽出物,外膜蛋白)を用意し,P.gingivalis381株の超音波破砕抽出物抗原に対して高い抗体価を示す14名の歯周炎患者の血清を用いた.抗体の結合価はELISA法によって測定した.また,Limulus Amebocyte Lysate test,Lowryらの方法,Duboisらの方法を用いてそれぞれ各抗原標品のLPS量,蛋白量および炭水化物量を測定した.パパイン処理によって全菌体抗原と超音波破砕抽出物抗原については14名の血清中12名ないし13名の血清が中程度の抗体の結合価の減少を示したが,外膜蛋白抗原に関しては結合価の減少は殆ど認められなかった.一方,定量分析によって3つの抗原標品はほぼ等しい量の蛋白を含んでいることが示された.しかしながら,全菌体抗原は他の2つの抗原の約10倍のLPSを,外膜蛋白抗原は他の2つの抗原の約2倍の炭水化物を含んでいた.これらの結果より,歯周炎患者血清の多くは蛋白成分を抗原として認識しているが,なかにはLPSや炭水化物を抗原として認識している患者血清も数例あることが示された.以上より,P.gingivalis381株の主要免疫抗原は蛋白が主体であるが,その抗原決定基には,一部LPSや炭水化物も関係していることが示唆された.
|