研究概要 |
歯髄組織の培養法として、器官培養法と細胞培養法の2種類が選択された。器官培養はラット下顎切歯成長端部を数個に切断した象牙質歯髄複合体の組織片培養として行われた。〔 ^<14>C〕プロリン,グリシンおよび〔 ^<35>S〕硫酸いずれの標識においても、オステオポンティンと考えられる約60KDa(10%ゲル)のバンドがEDTA抽出画分に認められた。このことは、歯髄細胞によって合成されたオステオポンティンが選択的に象牙質の基質中に取り込まれており、しかもこれが硫酸化されていることを示している。この60KDaバンドはトロンビン消化により30KDa以下のバンドにシフトダウンしたことから、この蛋白がオステオポンティンであることが明確となった。一方、細胞培養法では、ラット歯髄クロ-ン細胞が用いられた。一つはRPCーC2A細胞(東京医歯大歯学部より供与)、もう一つはRDP4ー1細胞(新潟大歯学部より供写)で、いずれも高いアルカリホスファタ-ゼ活性を有する細胞である。これらの細胞を〔 ^<32>P〕リン酸で標識すると、60KDa(10%ゲル)のリン蛋白が最も多く培地中に分泌されていた。このバンドは15%ゲル上では44KDaに位置し、トロンビンによって28KDaと26KDaの2つのバンドに分かれた。また、オステオポンティンのモノクロナル抗体を用いた免疫沈殿法を行ったところ、この蛋白がオステオポンティンであることが明らかとなった。〔 ^<35>S〕硫酸標識においても、60KDa蛋白は硫酸化を受けており.器官培養で得た結果と同様の結果を示した。以上のように.歯髄細胞がオステオポンティンを合成分泌し、象牙質基質に選択的に取り込まれ、さらにリン酸化や硫酸化という修飾を受けていることが明確に示された。これらの事実から、歯髄のオステオポンティンが石灰化過程に重要な役割を果たしているものと考えられる。なお、購入した微量高速遠心機は、蛋白の抽出や分離の際に、頻繁に用いられた。
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