歯周疾患における組織破壊に関与すると考えられる蛋白分解酵素の存在を検討するため、歯周炎患者18名(男性10名、女性8名、年齢25-64歳)の歯肉溝滲出液中の中性蛋白分解酵素の濃度をELISA法にて測定した。その結果、エラスターゼ量、カテプシンG量共にポケットが浅い(1-2mm)ときは最小で、ポケットが中等度(3-5mm)から高度に(6mm以上)になるにつれ増加し、これらの酵素が歯周疾患における組織破壊に関与する可能性が示唆された。 続いて、歯周組織における結合組織性付着に影響する因子およびその程度を検討するため、歯根膜由来線維芽細胞培養系を用いてin vitroにおける歯周疾患非罹患及び罹患根面への線維芽細胞の付着に関する実験を行い、併せて、根面に付着した細胞のDNA合成量およびアルカリホスファターゼ活性を測定した。その結果、根面が組織為害性物質で汚染されていない試料では細胞の付着及び増殖状態が良好であった。さらに根面に付着した細胞のDNA合成量は非罹患根面及び罹患根面共に、培養初期7日間、対数増殖を示したが、罹患根面では非罹患根面に比べ有意に低く、50%の合成量であった。アルカリホスファターゼ活性は非罹患根面は罹患根面より有意に高かった。この実験系で、中性蛋白分解酵素の結合組織性付着に及ぼす影響を十分に検討できると思われた。 また試料の根面中から培養液中に溶出したエンドトキシン量は罹患根面では非罹患根面より有意に高かったが、罹患根面のエンドトキシン量は浸漬1日で総量の71%が溶出し、浸漬4日で非罹患根面のエンドトキシンと同レベルにまで減少した。 さらに、ブラキシズムに関する研究を行い、歯周組織破壊に関わる外傷性因子について検討した。今後、外傷性因子が線維性付着にどのような影響を及ぼすか検討を継続する。
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