本年度はマトリックスシステムの完成と臨床使用術式の確立を図るために以下の研究を行った。1.光透過型コンポジットレジンマトリックス材と分離材の改善。マトリックスレジンとフィラーの微調整をすることによって光透過性、稠度、賦形性について改善を図った。この内、光透過性の向上については硬化マトリックス表層にある未重合層をアルコール綿球によって清拭し乾燥後に液状分離材を塗って被膜形成を行うと良好な結果が得られることが判明した。粉末状賦形材を開発し後2者の改善を図った。2.コンポジットレジン修復物の解剖学的形態の再現性の比較。ヒトの抜去歯の頬側面5級窩洞、咬合面1級窩洞を形成し、YK式充填器充填、既製のマトリックス充填を対照にして、新規マトリックス充填の性能について比較検討した。その結果、新規マトリックス充填は前2者よりも微細形態の再現性に優れ、かつ操作も簡便であった。3.システム構成の比較。K-マトリックス材(単一ペースト状、光硬化型コンポジットレジン)、モデリングパウダー(粉末状賦形・分離材)と同採取紙、セパレーター塗布用チップとチップホルダーなどから構成すれば臨床使用に支障がないことが判明した。4.In vivo臨床応用実験。「5歯頚部侵蝕症、6」咬合面小窩裂溝齲蝕(1級)、54」隣接面齲蝕(2級)や7」メタルインレー2次齲蝕等に応用し、臨床的操作性や有効性について検討したところ有意に優れていることが判明した。5.臨床術式の検討。患歯の数や硬組織欠損部の有無からマトリックス調製法を直接法と間接法に分け臨床術式を確立した。6.マトリックスシステムの製品化。広く臨床応用を図るために指定メーカーの協力を得て製品化を図りK-Matrix Systemとして市販した。
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