研究概要 |
平成3年度における研究成果は以下の通りである。 ヒト乳歯象牙質粉末からPBSにて抽出された酵素(Pーext)をジェラチンあるいはカゼインを含むエンザイモグラムで検討した結果,基質分解能を有する主たる酵素の分子量は59KDであることが確認された。本酵素をジェラチンおよびヘパリンアフィニティ-カラムに分離,精製を試みその特性を検討した。59KD酵素の至適pHは6〜11とプロ-ドどあったが,ph9が最も強く,また,オステオポンチンを分解し,加熱,TIMPおよびEDTAで阻害されることが判明した。以上のことより,本酵素は象牙質中に存在するメタロプロテア-ゼの一種であることが示唆された。しかし59KD酵素は単離が困難で回収率も低いため,サンプルが多量に得られるウシの象牙質粉末を用いPーextをEDTAおよびグアニジンにて分離してその特性についてエンザイモグラムにて検討した。その結果、ウシ象牙質からもヒトと同様に59KDの酵素が得られたが,完全な単離は困難であった。従って至適pHは6〜12とブロ-ドであったが,その特性はAPMSFでは阻害されず,加熱,TIMPおよびEDTAで阻害されることが確認された。さらに象牙質基質タンパクに対する分解作用を検討するため,非コラ-ゲンタンパクであるプロテオグリカンをグアニジン,EDTAおよびDEAE Sephacelにより分離し,59KD酵素を作用された結果,グアニジンおよびEDTAで抽出されたそれぞれのプロテオグリカン分画を低分子化することが示された。これらの実験結果より59KD酵素が象牙質基質のうち石灰化に関係する非コラ-ゲンタンパクであるプロテオグリカン分解する事が確認され,象牙質の石灰化および象牙細管の成熟に関与する可能性が強く示唆された。これらの研究成果の一部は今年度第69回IADR,第33回日本歯周病学会,第95回日本歯科保存学会,および第4回Internatiomnal Conference on Chemistry and Biology of Mineralized Tissuesにて報告し、歯基礎誌33巻1号61〜69,1991年および日歯保誌35巻1992年に掲載した。
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