研究概要 |
平成4年度における研究成果は以下の通りである。 新鮮なウシ象牙質粉末からPBSにて酵素(59K P-ase)を抽出し,沈渣から4Mグアニジン塩酸塩でG-1分画を,0.5M EDTAでE分画を,さらに4Mグアニジン塩酸塩でG-2分画を得た。各分画をDEAE Sephacelに掛け,0〜1.0MのNaClグラジエントで分離し,ウロン酸を指標としてプロテオグリカン(PG)を回収した。抽出したPGをReversed-phase FPLCで精製し,コンドロイチナーゼABC処理によりコア-プロテインを確認した。さらに各PGとそれらのコア-プロテインに59K P-aseを作用させ,5〜15%のSDS/PAGEで電気泳動後,Stains All染色を施し分解特性を検討した。その結果,象牙質を構成する未石灰化部位,特に象牙前質のタンパク抽出分画と考えられるG-1には150〜180KDと300KD以上,石灰化抽出分画のEには130〜150KD,また,石灰化部位のコラーゲンに結合しているG-2には130〜180KD,および180〜210KDのStains Allで紫色に染色されるPGが存在した。特にEのPGには青染される80,70,65,45,40,30KDのコア-プロテインが確認され,カルシウム結合能を有するPGが数種類存在することが示された。また全てのPGは59KD P-aseで分解されたことより,本酵素がストロメライシン様活性を有することが確認された。 また,象牙芽細胞のin virtoにおける培養と基質の石灰化に関する研究では,ウシの下顎未萌出前歯より得られた前象牙芽細胞をマトリジェルを用いて60日まで培養を行った。その結果1〜2週で1本の突起を有する細胞が多数確認され,8〜9週で石灰化させたノジュール形成が確認された。今後本培養で得られた基質内のDNA量,ALP活性等を検討することにより検索を進める。 これらの研究成果の一部は今年度第10回日本骨代謝学会,第34回歯科基礎医学会,第97回秋期日本歯科保存学会にて報告し,日本歯科保存学会誌35巻2号422〜432,1992年および日本歯科基礎医学会雑誌36巻2号61〜69,1992年に掲載した。
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