1.研究の目的:ラットの下顎第一臼歯の近心根の歯髄を除去後、開放のまま放置し、根尖病変を作製し、1週間後、根管拡大を行い副腎皮質ホルモンを根管内に貼薬したときの根尖部歯周組織の変化を病理組織学的に検索した。 2.材料および方法:1)ラットにネンブタールで腹腔麻酔を行う。2)歯をラバーダム防湿し、髄腔を開拡し、抜髄を行う。3)抜髄後、開放のまま1週間放置する。4)その後、根管を拡大し、次亜鉛素ナトリウムとオキシドールにて交互洗浄を行う。5)対照群にはFC(Formalin-creosote)を貼薬する。実験群にはTC合剤(Triamcinolon acetonideとChlorumphenicolをPropylene Glycolで溶解したもの)を貼薬する。6)根管内に薬剤を貼薬時、貼薬後7日後、ならびに14日後にラットを屠殺し、病理標本を作製し顕鏡する。 3.結果:対照群(FC貼薬群)は、貼薬時では根尖部の歯周組織には好中球からなる軽度の炎症性細胞浸潤が認められた。また、根尖部の歯槽骨には一部に吸収がみられた。実験群(TC合剤貼薬群)でも、貼薬時には同様な所見が観察された。対照群7日では、根尖部の歯周組織には中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。また、根尖部の歯槽骨には部分的に吸収がみられた。実験群7日では、根尖部の歯周組織には中等度から強度の炎症性細胞浸潤が認められた。対照群14日では、根尖部の歯周組織の炎症性細胞浸潤は7日よりも減少していた。また、炎症性細胞浸潤の周囲には線維性結合組織が増加していた。実験群14日では、根尖部の歯周組織には7日よりは減少しているものの中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。 4.結論:本実験期間においては根尖病変作製後のTC合剤の貼薬は、根尖部の歯周組織の創傷治癒に対して有意に有効とは言えず、実験期間の延長などの詳細な検討が必要と思われる。
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