1、研究の目的:ラットの下顎第一臼歯の近心根の歯髄を除去後、根管拡大を行い、副腎皮質ホルモンを根管内に貼薬したときの根尖部歯周組織の変化を病理組織学的に検索した。 2、材料および方法: 1)ラットにネンブタールで腹腔内麻酔を行う。 2)歯をラバーダム防湿し、髄腔を開拡し、抜髄を行う。 3)その後、根管拡大を行い、次亜塩素酸ナトリウムとオキシドールにて交互洗浄を行う。 4)対照群にはFC(Formalin-creosote)を貼薬する。実験群には、TC合剤(Triamcinolon acetonideとChloramphenicalをPropylene glycolで溶解したもの)を貼薬する。 5)術後7日後、14日後、ならびに28日後にラットを屠殺し、病理標本を作製し組織学的ならびに、組織形態計測学的に観察する。 3、結果:組織学的には、対照群(FC貼薬群)7日および14日では、根尖部の歯周組織には、中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。また、根尖部の歯槽骨には部分的に吸収がみられた。実験群(TC合剤貼薬群)7日および14日では、対照群よりも弱い炎症性細胞浸潤が観察された。対照群28日では、根尖部の炎症性細胞浸潤は14日より減少していた。また、その周囲には線維性結合組織が増加していた。実験群28日では、根尖部の炎症性細胞浸潤は同じ時期の対照群よりもさらに減少しているのが観察された。そして、その周囲には線維性結合組織が増加していた。組織形態計測学的には、対照群では、7日、14日、28日に経時的に増加していた。実験群でも経時的に増加していたが、対照群と比較して有意な差は認められなかった。 4、結論:本実験の結果より、抜髄後のTC合剤の貼薬は、根尖部歯周組織の創傷治癒に対して組織形態計測学的には有意に有効とはいえなかった。今後は、根尖病変作製後におけるTC合剤貼薬の効果についても検討していく必要があると思われる。
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