1、研究の目的:ラットの臼歯の抜髄後に副腎皮質ホルモンを根管内に貼薬したときの根尖部歯周組織の変化を病理組織学的に検索した。2、材料および方法:1)ラットにネンブタールで腹腔内麻酔を行う。2)歯をラバーダム防湿し、髄腔を開拡し、抜髄を行う。3)動物を貼薬薬剤の違いによりA、B、Cの3群に分ける。A群には生理食塩水、B群にはFC(Formalin-creosote)、C群にはTC合剤(Triamcinolon acetonideとChloramphenicalをPropylene glycolで溶解したもの)をそれぞれ貼薬する。4)術後1、2、4週後にラットを屠殺し、病理標本を作製し組織学的ならびに、組織形態計測学的に観察する。3、結果:組織学的には、A群では、1週および2週では、根尖部の歯周組織には、中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。4週では、根尖部の炎症性細胞浸潤は2週より減少していた。また、その周囲には線維性結合組織が増加していた。B群では、1週および2週では、根尖部の歯周組織には、中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。また、根尖部の歯槽骨には部分的に吸収がみられた。4週では、根尖部の炎症性細胞浸潤は2週より減少していた。また、その周囲には線維性結合組織が増加していた。C群では、1週および2週では、A群と同程度の炎症性細胞浸潤が観察された。4週では、根尖部の炎症性細胞浸潤は2週より減少していた。また、その周囲には線維性結合組織が増加していた。組織形態計測学的には、各群の根尖部の歯根膜部の面積は、C群の動物では全実験期間を通して、A群の動物との間に有意な差は認められなかった。しかし、2、4週では、B群の動物と比較して有意に減少していた。4、結論:本実験の結果より、抜髄後のTC合剤の貼薬は、根尖部の歯周組織の創傷治癒に対してFCより有効であることが推測された。
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