研究概要 |
目的 歯の象牙質と修復用コンポジットレジンの接着強さとその耐久性の向上を計ることを目的に、重合性プライマ-の開発とその接着効果および作用機序の解明を行った。すなわち、象牙質のコラ-ゲンと親和性がありさらに重合が期待出来るアミノ酸メタクリレ-ト誘導体を合成し、この化合物とHEMAの水ーエチルアルコ-ル溶液に重合触媒を添加したプライマ-の象牙質への効果を接着強さから検討した。 材料及び方法 1.アミノ酸メタクリレ-トの合成:グリシンとメタクリル酸クロライドを反応させてメチレン鎖長(n=1〜10)の異なるメタクリロイルグリシン(MG)を7種類合成した。2.プライマ-の調製:MG(4.2mo1%),HEMA(5.6),エタノ-ル(25.2)および水(65)溶液にレドックス触媒をモノマ-に対して0.4〜1.0wt%添加した。3.接着強さの測定:牛新鮮下顎切歯の象牙質をJIS,600番シリコンカ-バイトペ-パ-で研磨仕上げした後に、40%リン酸で30秒間処理した被着面に2.で調製したプライマ-を塗布し、次にコンポジットレジン(クリアフィルSCーII,クラレ社製)を充填した。こうして作製した試験体の接着強さを37℃水中24時間浸漬後に、オ-トグラフを用いて測定した。 結果及び考察 MGのメタクリロ基とカルボキシル基の間のメチレン数(n)が1〜5の化合物から成るプライマ-で処理した象牙質とコンポジットレジンの接着強さは、n=1.9.41MPa,n=3:6.69MPa,n=4:6.97MPaおよびn=5:6.49MPaであった。本結果はメチレン教の最も少ないMGプライマ-が高い接着性を示し、n=3〜5には大きな変化は見られなかった。これはカルボキシル基の解離に関係しており、解離しやすいn=1のプライマ-が基質のアパタイト脱灰してカルシウム塩を形成しているためと考えている。しかし、触媒無添加のプライマ-を使用した場合は、n=5が高い値を示しており次年度に継続実験を行う。
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