研究概要 |
研究目的:歯の象牙質とレジンの接着性の不足から、修復物の脱落や辺縁漏洩による2次う蝕が指摘されている。そこで、これらの問題は接着強さとその耐久性の向上を計ることによって解決できると考え、重合性プライマーの開発、その接着効果および作用機序の解明行った。即ち、象牙質のアパタイトおよびコラーゲンに作用し、重合が期待できるアミノ酸メタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)から成る水系プライマーの接着効果について検討した。 材料および方法:アミノ酸メタクリレートの合成;α‐アラニンとメタクリル酸クロライドを反応させてメタクリロイルアラニン(MAL)を得た。2プライマーの調製;(1)MAL‐HEMA‐水の3成分の種々の比で溶解した。(2)HEMA‐水の2成分を種々の比で溶解した。3.プライマーの象牙質への作用機序;(1)のプライマーと第3リン酸カルシウムを反応させ、その生成物をIR、X線回折、ESCAおよびNMRによって分析した。(2)のプライマーをコラーゲンに作用させて、HEMAコラーゲンに対する吸着量をIRスペクトルから求めた。4.プライマーの接着効果;(1)および(2)のプライマー処理した象牙質に市販ボンディング材(Clearfil New Bond, クラレ社)を塗布して接着強さを測定した。 結果および考察:プライマー(1)と第3リン酸カルシウムを反応させると、第2リン酸カルシウム、MALの結合したリン酸カルシウムおよびMALカルシウム塩が生成した。プライマー(2)は象牙質コラーゲンに30%HEMAが最も多く吸着し、マイクロフィブリルの構造に変化を与えることが発見された。接着強さは、(1)のプライマー処理した象牙質に10〜15MPaの値を示してプライマーの効果が5〜7倍あった。接着耐久性(4‐60℃サーマルサイクル、2万回)は、本プライマーの使用で顕著に向上した。
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