義歯性口内炎の予防手段の一つとして、義歯洗浄剤を用いたデンチャー プラーク コントロールがある。本研究は生薬に着目し、為害性の少ない義歯洗浄剤を試作、効果の検討を行うことを目的とした。 義歯性口内炎患者から高頻度に検出されるカンジダ属に対し、強い活性を示した生薬に共通する成分塩酸ベルベリンを配合した義歯洗浄剤を試作した。様々な濃度の塩酸ベルベリンを含有する試作義歯洗浄剤について抗真菌活性試験を行い、最も良好な結果を示したものを選択した。各洗浄剤の活性は時間依存的であったが、濃度依存的ではなく、一部に相殺作用が認められた。 上記の試験で選択された試作義歯洗浄剤について、レジン付着真菌除去試験と歯科材料に対する物性試験を行い、以下の結果を得た。1.レジン付着真菌除去試験において、試作義歯洗浄剤の真菌除去率は約64〜90%であり、ポジティブコントロールとして用いた市販義歯洗浄剤との間に有意な差を認めなかった。2.レジンプレート、硬質レジン歯、普通レジン歯に対する変色試験において、試作義歯洗浄剤浸漬試料は、空気中放置、蒸留水浸漬、ポジティブコントロール浸漬の場合と有意な差を認めなかった。3.レジンプレートの表面粗さ測定の結果、試作義歯洗浄剤浸漬試料は空気中放置、蒸留水浸漬、ポジティブコントロール浸漬の場合と有意な差を認めなかった。 レジン付着真菌除去能は、義歯の清掃において重要な指標の一つである。このレジン付着真菌除去試験において試作義歯洗浄剤がポジティブコントロールと有意な差を認めなかったこと、さらに物性試験において空気中放置や蒸留水浸漬の場合と有意な差を認めなかったことから、生薬成分を配合した試作義歯洗浄剤が有用である可能性が示唆される。
|