研究概要 |
親水性レジンの問題点を改善し,なおかつ義歯床の粘膜面のみ親水性にして,顕粘膜となじみを同上させることを目的として,疎水性レジンの表層部のみに親水性レジンを用い,疎水性レジンならび親水性レジントの比較検討を試みた。 (実験方法)○吸水率,接触角:疎水性レジンの試片を作製し,その表面を0.5〜3.0mm研削して,その上に餅状になった親水性レジンを加えて重合して作製した試片,および餅状になった疎水性レジンをフラスコ型に埴入した後,その表面に0.2〜0.5mlの親水性レジンのモノマ-液を滴下,浸透させた後に重合して作製した試片の両者について測定を行った。○曲げ強さ,曲げたわみ:餅状になった疎水性レジンをフラスコ型に埴入した後,その表面に0.2〜0.5mlの親水性レジンのモノマ-液を滴下,浸透させた後に重合して作製した試片について測定を行った。 (結果と考察)○吸水率:疎水性レジンに対する親水性レジンの厚さが薄い場合,そして餅状の疎水性レジンの上に親水性レジンのモノマ-液を滴下しても,疎水性レジンと同じ位の値を示した。○接触角:いずれの試片においても親水性レジンと同じ位の値を示した。○曲げ強さ,曲げたわみ:いずれの試片においても疎水性レジンと同じ相な値を示した。 以上の結果から,疎水性義歯床用レジンの表面(特に12腔粘膜と接する面)に親水性レジンを一層施すことにより,その表面に親水性が得られることが明らかになった。しかしながら,表面の親水性(義歯床と粘膜面,とくに透液とのなじみがよい場合)は,義歯の維持がよいと言われているが,これを歯科理工学的に証明した論文がないことに気がついた。 そこで次年度から,義歯床用レジン表面の親水性と維持力の関係について歯科理工学的(口腔内ではなく模型上で)に解明してゆきたいと思う。
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