現在まで義歯床の維持を評価するために床の離脱力を測定する場合、個人差があり条件の一定ないし口腔内で直接測定を行って来た。これに対して条件を一定にすることが可能な模型上で義歯の離脱力の測定が出来れば、その結果、義歯の維持について歯科理工学的に考察することが可能になるものと考える。 この目的のために、床用レジンで作製した上顎総義歯と、上顎無歯顎の単純模型の口蓋部の粘膜面に約9cm2のくぼみを設け、この中に親水性のシリコーンゴム印象材を注入して作製した顎模型との間に、人工唾液を介在させたときの両者の離脱力を測定した結果、離脱力は親水性床用レジンの方が疎水性床用レジンよりも大きな値を示した。このとき人工唾液としてグリセリンのような粘度の大きい溶液を介在させた方が大きな値を示した。このとき人工唾液としてグリセリンのような粘度の大きい溶液を介在させた方が大きな離脱力を示した。 さらに比較の意味で行った印象材を交換せずに人工唾液を介在させて離脱力を測定した結果、離脱力は最新親水性レジンの方が大きい値を示したが、水中浸漬時間の経過とともに減少し、4週間後では疎水性レジンよりも小さな値を示した。そして水中浸漬3ケ月後に新しい印象材と交換して離脱力を測定した結果、親水性レジンの方が大きな値を示した。これは親水性レジンの大きな吸水による変形が原因で離脱力が減少したものと考える。 これら離脱力の測定から、上顎無歯顎の口蓋部粘膜を模倣して、親水性のシリコーンゴム印象材を用いて作製した顎模型と、親水性床用レジンを使用して作製した上顎総義歯との間に、グリセリンを介在させたとき最も大きな離脱力を示すことが明らかになった。 また今回限られたこれらの結果は、無歯顎の粘膜を親水性のシリコーンゴム印象材で模倣する方法を用いることにより、模型上も総義歯の離脱力の測定が可能なことを示唆しているものと思われる。
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