親水性床用レジンについて、従来から用いられている疎水性床用レジンと比較したところ、接触角の測定から、唾液とのぬれは良好と考えられるが、機械的強度そして装着後の悪臭のもととなる吸水に問題のあることが明らかになった。 そこでこの親水性レジンの最大の特徴である良好な唾液とのぬれには影響を与えずに吸水を低下させ、その上に機械的強度を向上させる目的で、従来から用いられている疎水性レジン床の粘膜面表層部のみを親水性レジンに置き換え、維持のよい義歯床を試作することに加えて、現在まで義歯床の維持を評価するもとになる床の離脱力を測定する場合、個人差があり条件の一定しない口腔内で直接測定を行って来たが、条件を一定にすることが可能な模型上で離脱力の測定が可能なように、測定方法の確立を試みた。 先ず、疎水性レジン床の粘膜面表層部のみに親水性レジンを用いた義歯床の物理的性質を比較した結果、接触角は親水性レジンに近い値を示した。その上、曲げ強さや曲げたわみという機械的性質、そして吸水率は逆に疎水性レジンに近い値を示したことから、この方法を用いることにより、親水性レジンの最大の特徴である唾液との良好なぬれには影響を与えず、吸水を低下させ、機械的強度を向上させることが出来たと思われる。 つぎに、上顎無歯類の単純模型の口蓋部の粘膜面にのみ親水性のシリコーンゴム印象材を用いて作製した顎模型と上顎総義歯との間に、人工唾液を介在させたときの両者の離脱力を測定した結果、親水性レジン床の方が疎水性レジン床よりも大きな値を示した。これは口腔内で義歯の離脱力を直接測定した結果と一致したことから、この方法を用いることにより、模型上で総義歯の離脱力の測定が可能なことを示唆しているものと思われる。
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