欠損歯列者の補綴処置においてはその第一要件として下顎位が正しく回復されることが要求される。中でも咬頭嵌合位の的確な回復を如何にさせていくかは補綴学に課せられた大きな問題である。今年度の研究としては:前年度までの研究により、下顎「支持域」を喪失した遊離端欠損に対する遊離端義歯の基本的な設計指針が決定された。そこで今年度以降はこれに基づき: 【.encircled1.】遊離端欠損患者に対し基本的な設計指針に従い補綴処置を実施し、特に設計の鍵となる支台装置の製作の合理化を図った。 【.encircled3.】国の施策である高齢者における歯の残存方針、いわゆる「8020運動」に鑑み、遊離端欠損患者の処置方針について検討した。 その結果: 【.encircled1.】下顎「支持域」を構成する咬合接触を的確に回復する遊離端義歯の支台装置としては支台歯と義歯床間の連結がより強固な支台装置が望ましいことが分かった。Konuskroneに代表されるこのような支台装置の製作を合理化するため、国民の大多数がこの設計を享受可能となるように社会保険体制下の義歯設計にここに示した支台装置の特長を有した新しい装置を考案し、Konuskroneとの連結強度の差違を比較検討した。その結果、Konuskroneを1とした場合これら新考案の支台装置は1.6〜1.9倍となり、通法による場合の2.9倍に比べ大幅な連結強度が向上することが示され、従って、義歯による下顎「支持域」の回復に資する物となることが示された。 【.encircled2.】前年度までの研究結果と今年度の結果からみると、的確な咬合支持の回復には個体によっては第一大臼歯による咬合接触が不可欠である者の存在することが示された。従って、いわゆる8020つまり、第二小臼歯までの保存を目標とすることは概ね当を得ているものの、必ずしも、大臼歯部の補綴処置の必要性を無しとするものでないことが示された。
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