欠損歯列者の補綴処置においてはその第一要件として下顎位が正しく回復されることが必須である。中でも咬頭嵌合位の的確な回復を如何に図るかは補綴学に課せられた大きな問題のひとつである。本研究においては一連の下顎「支持域」の回復に関する研究のなかで次の事象を明らかとすることが出来た。 1)遊離端義歯における咬合力の配分について支台歯と欠損部顎堤の支持の役割を明確とした。遊離端義歯の支台装置に支台歯と義歯床間の連結強度に差違のあるものを適用すると、連結強度の大きな支台装置では有床部下の顎堤の負担割合は20%程度であった。連結強度が小さなばあいにこれは70〜80%と増加し、同時に咬合接触の回復もその的確性が失われて来ることが示された。 2)遊離端欠損患者における上下顎間関係の規定(咬合採得)に際しては咬合床を用いるが、これの適用につき、咬合のさせ方は極力小さな力で咬合させるのが下顎位の再現という点から示された。 3)即時遊離端義歯の役割として下顎位の保持が極めて重要であることが示された。 4)咬合接触の消失による下顎位の変化は経時的にはほぼ2週間程度で出現し、第2小臼歯まで残存すると変化しないグループ、第1大臼歯まで残存しないと変化するグループの少なくとも2つが存在することが示された。 5)1)で示された遊離端義歯を臨床において広く国民医療の観点から普及させるため合理化した支台装置を発表した。
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