総義歯の咀嚼機能の評価を客観的で確実な方法とするために本研究では咀嚼をシュミレ-ショトした実験細置を考案し咀嚼に伴う食品のテクスチャ-の変化をとらえ検討した。実験に使用した食品は、カマボコ、沢庵、チ-ズ、リンゴの4種類である。カマボコとチ-ズについては粘性、弾力性、付着性などを考慮し、沢庵とリンゴについては弾力性ともろさについて類似した傾向を持つと仮定し選択した。実験装置はレオメ-タ-(CR200DーS)を使用しパ-ソナルコンピュ-タ-(PCー9801 RX21)に接続し自作した専用ソフトにて測定分析を行った。実験方法はレオメ-タ-に直径15mmの圧接子を取り付け、加重300gで15秒間圧接し加重除去前後30秒間の試料台の上下位置を記録した。実験材料は食品を10×10×10mmの立方体に成形しあらかじめクリ-プテストを行った。さらに同じ寸法に成形した試験食品を総義歯装置者に10回咀嚼させ試料を回収した。回収した試料はレオメ-タ-の圧接子と同じ内径を持つシリンダ-状の容器に入れて測定を行った。各々の食品について繰り返し6回の測定を行い咀嚼前、咀嚼後について計48回の実験を行った。その結果、咀嚼前では全ての食品で粘弾性的な挙動が認められた。すなわち加重時間を横軸に変位量を縦軸にプロットすると加重除去前後で極性の変化する2次曲線を描いた。しかし咀嚼後の試料では加重に応じた直線を描いた。これは咀嚼後の試料をシリンダ-状の容器内で試験したが結果的に咀嚼により試料が粉架され見かけ上食品の凝集力が低下したことによると考えられる。つまり見かけ上のテクノチャ-の変化について適切な測定基準を確立することにより咀嚼能率を客観的に評価することが可能であると考えられる。今後、圧接子の大きさや形態について考慮することにより定量的な咀嚼能率についても測定可能であると考えられる。
|