歯科修復用コンポジットレジンのうちから、含有フィラーがハイブリッド型、従来型、ミクロフィラー型に分類される材料を選択し、これらのコンポジットレジンで修復した窩洞の辺縁封鎖性を熱サイクル負荷数に対する耐久性として評価した。 ウシ歯質板(約7mm角、厚さ約2mm)にエナメル質窩縁を有する直径3mmの貫通円孔を形成し、この円孔を擬似窩洞としてコンポジットレジンで修復した。研磨後修復歯を試料保持装置に固定し、エナメル質窩緑側に4℃と60℃の染料溶液を15秒間づつ交互に接触させ熱サイクルを与えた。一方、試料象牙質側には蒸留水を循環させ、この蒸留水中に漏洩してくる染料量を定期的に定量した。 測定を継続していく過程で、当初トレーサーとして使用していたローダミンBはコンポジットレジンへの吸着、浸透性が比較的大きく、微小な漏洩を長期にわたって測定する封鎖性試験において適さない面が認められた。測定終了後の漏洩状態の観察できる点も考慮すると、トレーサーにはメチレンブルー水溶液が適当であった。 本研究では辺縁漏洩が開始する熱サイクル数を推定して辺縁封鎖性を比較したが、漏洩濃度の変化挙動および漏洩開始熱サイクル数の推定値は試料ごとに変動し、封鎖性が単に材料の性質だけに依存するのではないことが明らかであった。しかし、大きな接着強さが得られるとされている処理を施した場合やコンポジットレジンのフィラー含有率が高い場合にはより優れた封鎖性が得られる傾向を示した。ベベル付与による窩洞形態の影響は複雑で、エナメル質窩縁付近のコンポジットレジンの熱変形挙動の複雑化、窩壁にしめるエナメル質部分の比率の増大、あるいは漏洩経路の伸長など、種々の要因が影響しあっていると考えられた。
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