研究概要 |
本研究の目的は、BMPによる骨形成における種々のサイトカインの役割を検討するために、遺伝的にサイトカイン異常を有することが知られているループスマウスにBMPを注射し、それぞれのループスマウスのサイトカイン異常を規定する遺伝的背景とBMPによる骨形成との関連性について検討することである。材料および方法:C3H/+/+、MRL/+/+、C3H/1pr、MRL/1pr、B6/1pr、およびC3H/g1d系マウスの大腿部筋組織内に、牛骨由来のcrude BMPを注射、BMPによる異所性骨形成が認められた大腿部組織を摘出、それぞれの標本の軟X線写真を撮影、写真上で骨形成部をトレースし、画像解析装置を用いて骨形成部の面積を算出、それぞれのマウスの骨形成量を比較するとともに、通法に従って組織切片を作製、組織形態学的に検討した。結果および考察:C3H/+/+に比較し、C3H/g1d、C3H/1pr、およびMRL/+/+のいずれにおいても有意にBMPによる骨形成の促進が認められ、C3H/g1dとC3H/1prおよびC3H/g1dとMRL/+/+とを比較した場合、いずれにおいてもC3H/g1dに有意な骨形成の促進が認められた。以上より、g1d、1pr,およびMRL背景遺伝子はいずれもBMPによる骨形成を促進し、特にg1d遺伝子が1prおよびMRL背景遺伝子に比較し強い骨形成促進能を有することが明らかとなった。これまでに遺伝子に規定された骨代謝異常の例としてはM-CSFの産生が欠損している大理石マウスが知られているが、今回得られた結果は、g1dや1pr遺伝子を有するマウスが骨形成におけるサイトカインの役割を検討する上で、極めて有用な研究モデルと成り得ることを示唆しているものと思われる。
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